神々の角笛 (ハロルド・シェイシリーズ)
この本、今の私のアイルランド嗜好を決定づけた根元です。これを読まなかったら自分がこんなにアイルランド好きになることはなかったでしょう。
この「ハロルド・シェイシリーズ」は1940年代「アンノウン」というファンタジ専門の文芸雑誌に連載されたファンタジーもので、それを後に5冊のペーパーバックとして出版されたものです。(日本では4冊に編集)
ディ・キャンプとプラットの共同執筆で主人公がアンチヒーローのドタバタコメディ、というのが一般の定説です。が、実はそれは最初だけで(^-^;)、シリーズが進むと作者達も情が移ってくるのか、カッコイイ本物のヒーローになっていきます。
魔法やしかけなんかの設定も、今よんでもまったく違和感のないストーリーで、(もっともSFじゃないので、電気製品とかの比較のしようがないわけで、その辺は作者のセンスの良さですね。)むしろ常に新鮮な感動があります。
普通のファンタジーは呪文を唱えて色んな魔法を使うわけですが、これは物理学の教授が考え出したある公式を呪文の代わりに唱えるんです。物理学の公式って設定なんで一応それなりに理論的な物理学の味付けがされていまして、そんなセンスが結構面白いです。(^-^;)
さて、で、この公式を唱えると自分が行きたい世界、どんな架空の世界へでも、神話でも、文学でも、SF小説でも、多分映画の中でさえも自由に行ける、となっているのですが、そこがドタバタテイストのファンタジーで、必ず変な世界へ旅することになるのです。あ、これって昔やってた、「タイムトンネル」。あれですね。(^-^;)
さて、1話では、まだアンチヒーローのドタバタって風味に作者がこだわりすぎるのか、それほどでもないです。が、2話、3話と話が進むに連れてストリーが自然になり、魅力的な登場人物が沢山登場してきてほんとに楽しい物語になっていきます。そして、この最終話でアイルランド神話の世界が登場し、これに私、ハマッてしまいましたー(^-^;)。
これ、1話が北欧神話で、2話がイギリス18世紀の作家エドモンド・スペンサーの叙事詩「妖精の女王」の世界、3話が「ザナドゥ」の世界とスペインの作家アリオストロの叙事詩「狂えるオルランド」、4話が北欧の「カレワラ」の世界と「アイルランド神話」のク・フーリンの世界です。実はどの世界も非常に魅力的でオリジナルを読んでみたくなり、これまた買いあさったのですが、「妖精の女王」は絶版で入手できませんでした。(^-^;)
で、話が盛り上がり登場人物も最高潮!いよいよこれからって時に、共同執筆のプラット氏が死去したため、ほんとに残念ながらこのシリーズは中止になったそうです。(すべて私が生まれる前の話…^-^;)でも、この設定、とってもワクワクするスケールのでかいモノだったので、もっといろいろな世界を冒険してほしかったなあと、ほんとに残念です。他に行かせたいとこいっぱいあったのになあ。
最終巻のあとがきにディ・キャンプが書いてますが
ハワードの「キンメリアのコナン」の世界とかにも行かせたかったとあります。ううん、面白そう!!(TT)
私に文学の才能あれば自分で書くのですがねえ。
でも今は世界的にファンタジーのブームなんで、そのうち映画化とかなると嬉しいですねえ。
ただ、指輪とかのファンタジーとは世界観が違いますけどね。
どちらかというとこの小説はマーク・トゥエインの「アーサー王宮廷のヤンキー」の流れにあるような気がします。
話のノリも「トム・ソーヤ」とか「ハックルベリー・フィン」とかの奇想天外な冒険モノの楽しさいっぱいですから。
主人公のお気楽なところとかね(^-^;)